( néant )

消費期限切れの言葉たち

High and Dry

丑三つ時をちょっくら跨いだ夜明け前は、静寂が闇を照らして来る朝の準備をしている。

 

イヤホンを通す歌声は心どころか、身体中を駆け巡る快感を覚えたようで、後ろを向くことを許してくれてるようだ。

 

ぼくは、ずっと僕のままで。

きみは、ずっと君のままだろう。

 

そんな事、考え出さずとも答えがない沈黙みたいにため息がよく似合う。

 

街中の雑踏の真ん中に佇んでいるわけでもないし、外気で触れ合ってる動植物の鳴き声の中にいるわけでもないのに。

 

わざわざイヤホンを取り出して音楽に身を預けたくなる時がある。

そんな時は決まって、甘い哀愁を身にまとってキザな吐いてない男を演じているようだ。

 

耳の穴を突き通して脳髄を撫でてくる

Radiohead

 

10代の時は避けてきた音楽も手に取り、気づいたらメロディも歌詞も吸い尽くしてしまっている。

 

そう思い返しながら

年を重ねたのだと、無理矢理解釈している。

 

きっと、幽霊が出てきても

今なら話しかけてしまうだろう。

見えたとして、話したとして

もとは生きていたものだと

言い聞かせて、友達になる気でいるだろう。

 

本当に怖いのは人間なのだから。

傷つけあって平気な顔をして今日も明日も生きている。

 

明日は我が身なんて嘘に違いない。

明日も明後日も昨日、一昨日あきらめた幽霊に我が身などないのだから。

 

僕は本当に大切なものはなんなのか、ひたすら考えて生きてきた。

生きるために、生まれたために半永久的に考えていく。

 

運命なんて軽薄な言葉で終わらせるには、まだまだ時間がありすぎて。

奇跡なんて疑心な言葉で綴ってゆくには、あまりにも心がなさすぎて。

 

とうとう、考える事をやめてしまうだろう。

でも、それでいいのかもしれない。

生きるに意味も理由も無ければ、死ぬもまた然りなんだろう?

 

ただ、ただ、時間に操られて思い出を語ってゆくだけだろう?

後悔を食べて、許すだけだろう?

 

そうだよ、仕方ないよ。

時間は取り戻せない。

そうだよ、仕方ないよ。

一度離した心は2度と掴めない。

 

眠れないや。

いや、眠りたくないんだ。

 

もうちょっとだけ、

もうちょっとだけ、

明日の意味を考えさせてくれないか。

 

もうちょっとだけ、

もうちょっとだけ、

君の事でも思い出させてくれないか。

 

 

このまま、イヤホンを抜くのはちょっと悲しい気がするんだ。

遠くなってゆく声は、遠くなってゆく記憶と比例しているようだよ。

 

耳の穴にすーっと入る声が、メロディが、言葉が

痛いくらい嬉しいはずなのに、苦しいくらい愛おしいはずなのに。

なんだか、悲しくなってしまうんだ。

 

このまま、目を閉じてしまえば思い通りになるのだろうか。

このまま、目を閉じてしまえば反時計回りにまた出逢えるだろうか。

 

わからないや、わかりたくもないや。

 

答えなんて

答えなんて

答えなんて

 

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