( néant )

消費期限切れの言葉たち

072

気づけば、今年ももう終わるらしい。

気づけばと言ったが、気付いていた。ずっと、ずっと。

気がつかないふりをふりかざしていたのだが、目に映る全てのものがタイムリミットを表してくる。

 

数字、言葉、色彩、気温、空気、テンキ、全てのものが頼みやしないのに知らせてくれる。

 

なんだ、知ったことじゃない。

ただ一年が終わるだけだ。自分を戒めても美しくない年齢になっていくだけだ。

若さは偉大だと思っていた。でも違う。

若いは無知であるがゆえの輝きが自分の存在を照らしてくれていただけだ。

仮想 幻想 妄想 なんだっていい、全部叶うものだと思っていただけだ。

 

また年をひとつふたつととって、また事実をひとつふたつとおおいかぶすのだ。

都合がいいもんだ、人間なんて。

 

オチが無いことが当たり前になってきた。

オチないものがアリすぎている気がするした。

 

たぶん、ずっと変わらない変われない。

変わりたくないんだ。ずっとずっとずっとずっと。

 

誰かの為に成ることさえ無理な気がしてきた。

年を重ねるのは怖くない。お爺ちゃんになったっていい。

ヨボヨボになって、中身は病に冒されたっていい。

こわいのは、年を重ねるごとに、自分の無力さを痛感することであって、頭の中から出てくる言葉が一昨日誰かに喋ったつまらない話のようで。

 

褒められたいと思えど、褒める要素なんてどこにもなくて

それを自分が一番知りすぎている。

 

共感されたいと思えど、共感されないことを掲げている。

それを伝えたとこで伝わらないこともすごく分かるし

それが伝わらなかった後始末が虚しくなるばかりだ。

当たり前だ。自分でもなにがなんだか分かっていないのだから。

 

 

わからない。わからん。

でも、たしかに心の中、あるいは身体のどこかしらに何かしら引っ掛かってる黒いものがある。

ずっととれない、いつからついたのかもわからない。

とりたい。でもとれない。

 

孤独には慣れたはず。

一人で居るのも悪くない。

 

ただ、だめなんだ。完全体じゃないのだから。

寂しいときが不意にくるときがある。

確かに誰かを求めたくなって、それはものでも動物でもなく人であって

でもその誰かは頭にでてこないし、出てきても勢いにまかせて求めたくなるほど許された関係でもない。

壊れそうになる。とっくに壊れているからなんの支障もないのだろうけど。

壊したいと願ってるわけではなく、唐突に壊されるものはすごくさびしい。

 

 

たまには甘えたいときだってある。

たまにはなにも言わずくっつきたいときだってある。

たまにはただただ手のひらに触れたいときだってある。

たまには言葉を推測しないで耳から直接感じたいときだってある。

たまには見つめ合って照れ隠ししたいときだってある。

たまにはふたりでだめになってしまおうかってバカ言い合いたいときだってある。

 

弱いのは知っているはずなのに、誰にもそれを伝えられない事が更に弱さを突きつける。

伝えられないではなく、伝えても分からないのではないか。と諦めてる自分の立ち止まったままの足が憎たらしい。

まさに、伝えたい誰かに話したい、誰かと分かち合いたい。と思ったときに誰もいない事がなによりもくやしい。

 

だけど、わかってんだ。

ずっとそうだったのだろうし、ずっと独りだったのだろうけど。

隣に自分を一番に見てくれた人がいたばっかりに、理想郷を創り上げたのかもってことも。

 

うれしいもんなんだ。

友達でも家族でもなくて、好きな物から繋がった絶対的味方なんかでもなくて、ただ一人と特別な誰かがいたことはうれしいってことなんだ。

 

 

味を覚えてしまったよ。

今まで食べたことのないくらい美味しくて戻れないほどの味を。

 

情けでも慰めでもなんでもいいから

嘲笑っても怒っても冷めてもいいから

 

せめて抱きしめさせてくれよ