( néant )

消費期限切れの言葉たち

本の虫になりたいのだけど。

僕はこれから本を読もうと思っている。

できれば本の虫、ビブリオフィリアになってしまいたい。と

 

そう思ってかれこれ数年が経つ気がする。

未だに僕は本の虫になれていない

本の虫どころか折り目一つない新品そのままの状態で本棚に並んでゆくものだから

小さな小さな書店の一角を模するようである

 

 

そもそも僕はいままで本を読むことすらしてこなかった。

3歳からゲームボーイを手にしていたし

公文の音読宿題を親の目を盗んでは家の開かずの間に放り込んだりしていた

いま思うと一番簡単な宿題だった気がするのだけども、放り投げていたのだ。

同級生がコロコロコミックやマガジン、ジャンプといった漫画雑誌を嗜む頃には

僕のゲームボーイは、スーファミ、PS、PS2と成長を遂げるばかりで

三度ほど呼びかけないとこちらを振り向かない同級生のように

僕が紙面に食い入ることはほとんどなかった。

 

それでも小中は共同体な世界だから

人並みに単行本を買ったりしていたが

どれも物語にハマる前にドロップアップした気がする。

 

小学校の時は図書館が好きだった。

図書館の先生は厳しめなふくよかなおばあちゃんで、

受付に座ってる姿は、お世辞にも愛嬌があるとは言えないほど真顔が似合う先生だった。

でも、わんぱく盛りでお調子者だった僕は

図書館に行くなり、本には目もくれず

先生の目の前に座り、よくおしゃべりをしていた。

お喋りは受付ていなかったのだけどね。

調子がいいからよく喋る僕に先生も諦めて相手をしてくれていたのだろう。

今思うと、邪魔でしかなく申し訳なく恥ずかしい気持ちさえするのだけど。

 

今でも覚えているのは、

当時一年間で80冊を読んだ人に特典として

しおりが貰える本を読ませようキャンペーンがあったのだが

本を読まないくせして、何故だかしおりがほしくてたまらなかった低学年の僕は、

お調子者生来の悪知恵を働かせて

しおりをゲットするためだけに本を借りまくったのだった。

もちろん、70〜60冊ほど水増し請求である。

目標の80冊に届いたとき、しおりをもらいに図書館の先生の真向かいにいつものように満面の笑みで陣取った。

先生は相変わらず愛嬌がなかったけど、

僕におめでとうといってしおりを渡してくれた

僕はすごく喜んだと思う。

手作りのしおりだったからか、特典癖が当時から身についていたのかわからないけども

すごく嬉しかったのを覚えている。

しおりをもらえたことが一番だけど

しおりを渡してくれた先生が

ちゃんと読んでないでしょう。と、

僕のいんちきを見透しつつも

おめでとうとしおりを渡してくれた

やさしさが嬉しかったのだろう。

 

だからだろう

僕は今日まで本をほとんど読まずに生きてきたのだけど。

図書館の雰囲気は好きなままだし

本を嫌うどころか、ある種憧れを持つほど

本を羨望している。

読めたらいいのになあ。と、武器にしようとしている

 

この長い数年で本の虫になっていたらば

僕は今頃ムシキングだろう

そんなゲームあったな。パクってしまったな。

つい先日友達にも『この長い数年でギター弾いてたら弾き語りできただろうな』と言ったら

そうだよ、本当だよと、

今さらどうしようもない

戻らない数年の話をする顔に呆れていただろうけど。

僕もちゃんとわかっている。

しなかった日を嘆いても意味がないのだ。

しないほど興味がなかったのだ

必要じゃなかったのだ

 

 

だけども僕は本当に本が必要だと思っている

wantからもはやneed、I have to〜になりつつある。

I wish I was〜ではだめなのだ

本の虫になりたいと強く思うのは

やっぱり自分の言葉に限界を感じている部分が大きい

 

 

言葉を紡ぐのが好きなくせして

年々うまく伝えるどころか、下手になってゆくばかり

それに打ちながらも似たような同じ言葉を連呼しているレパートリーのなさを感じている

本でしか学べない知識や言葉を身に付けたいと思う。

できるのならば大和言葉をマスターして

古風そのままに恋文でも詠んでしまいたい

どこまでも変わらないのはロマンチストな部分だけなので

 

それにやはり本を嗜んでいる人の

言葉は雰囲気もあって、

知らない言葉がたくさんある

ただただ、かっこいい

僕らは普通に言葉を使って話したり書き連ねたりするけども

ほとんど造語や同一言語の使い回しだったりするから、言葉の綺麗な人にはやっぱり惹かれるものだ

 

自分の言葉の限界と、中身のなさに気づいたから本を読むことにした。

前から気づいてはいたが、どうにか紡ぐ相手に引き出してもらって難を逃れただけで

紡ぐ相手がいなくなって痛感するばかりである

 

 

いきなり分厚い本なんか敷居が高いから

樹木希林の言葉を集めた本を買った

これなら読めそうってのと

樹木希林の演技や、あえて斟酌せずに歯に衣きせぬ言葉が好きだから読んで見たかった。

彼女の生き様は好きである

たぶん嫌いな人はいないだろう

最近、『あん』をみたが

みんなが樹木希林になれば幸せだろうにと理由なき阿呆らしい願望が浮かんだりした

読むのは時間がかかるだろうけど

ちゃんと読んでみたいと思う。

 

 

僕の僕自身でも分かりかねる感情を

存在するだけの言葉で表現したい

伝わらないかもしれないけども

伝えようとすることにも意味はあるかもしれない

僕のことに興味を持ってくれた人は

僕が本心で紡いだ言葉をみてくれた

僕にはそれしかなかったから

自己肯定感を自分で生み出せない今

やっぱり小さな部分であれ

誰かに認められたい

誰かに生きてることを知ってもらいたい

興味もたれて、承認されたいと思っている

 

人と人は年の数だけ疎遠になるけども

それは悪いことじゃなく

ごくごく自然のことだから

僕でも納得できるよ

嫌いで離れるとかじゃないから

人は変わって成長して

人生の転機で様変わりして

夢や目標ができて、恋をして

結婚して子を持って家庭を築き

一人だけの人生から、一人また一人と

背負ったり、共に歩むわけだから

仕方ないことなのだ

 

 

ただね、

疎遠なろうと、

刹那的な関係だろうとね。

僕は僕が存在していたことを忘れられたくはないと本心はそう思っている

 

だからこそ、

僕は言葉を延々に綴っていたい

死ぬまで、ひたすら、馬鹿丸出しで

クソみたいな人生のその都度で

興味を持ってくれて

褒めてくれた人達を信じて

言葉を大事にするつもりだよ

 

見向きされないのも悲しいけども

一人でも誰かに届くように

僕は本の力をかりてでも

僕は僕自身の言葉を信じたい

 

 

変わる格好良さもあるなら

変わらない美しさもあると思うから。