( néant )

消費期限切れの言葉たち

アメリカーノベンティアイス



僕はアホみたいにスタバに行く。
本当にアホみたいに行っている。
スタバの犬か、或いはステータス交じりの高校生かってくらい。

 

でも勘違いしないでもらいたい。
ステータスでもなければ、ブランド力に釣られてるわけではない。
確かに緑は好きな色だけど、正直話しかけられる接客は苦手であるし。
最も自分にとって美味しいコーヒーは別のところにあるのだし。
だから、1日に5杯以上は必ず飲むほどコーヒーは好きだけども、別にスタバが好きなわけではない。

では、何故行くのか??
アホだからである。

 

僕は深夜徘徊が好きである。
深夜徘徊というとちょっとニュアンスが変わりつつあるけども。


夜が好き。暗闇に包まれた中、孤独に光る街灯や昼とは比べられないくらい少ない車のヘッドライト、あまりにも静かであまりにも寂しいと錯覚してしまうそんな、夜が好き。雨や風が強い夜だと尚更好き。

 

好きな音楽と、窓を開けて風を感じ、タバコとコーヒーがあるなら深夜徘徊はすごく調子がいい。
明日なんか来ないでいいと何度も思っている。
疲れて眠たいときもやっぱりちょっとでも出たくなるし出てしまう。


夜に誘われて、夜に救われてるようで
夜に逃げてて、夜に飲み込まれている

 

買い出しを理由に、閉店間際にスーパーに行って自分は飲まない牛乳も食べない納豆もカゴに手早くいれてはエコバッグを出すのもサマになってきているだろうか。
メインディッシュは買い出しをした後なのに。
あくびをしながら疲れた仕事帰りの男性を演じるのもサマになってきているだろうか。

野菜も肉も外面を見たらある程度上質かなんてわかるのに、人間だとわかんないもんでしょう?嫌なもんに、成ってしまったな。

 

アホだから
夜と自分を照らしあわせて勝手に親近感を抱いている。
悲しくてやりきれない気持ちは君も同じだろう?と、悲劇のヒロインになるために夜を愛そうとする。
やりきれないほどの悲しさも、伝えきれない吐ききれないほどある。
でも、言葉にだせないでてこない。
アホだから

 

あまりにも静かで、あまりにも悲しいから、
あまりにも美しくみえてしまって、癒えてしまう。
きっと寂しくなっても、夜ならば許してしまう。

 

買い出し済ますと、スタバに向かう。
車から降りたくはないから、いつもドライブスルー。
そう、スタバに行くのは、12時まで開いていて大きいサイズのコーヒーがあって、ドライブスルーで買えるから。ただ、それだけの理由。

 

いつもの。と言わずとも電光パネルには
アイスアメリカーノベンティって載るくらいアホみたいに行っている。

タバコとコーヒーはどちらも手離せない。
何故?悲劇のヒロインには必要だから。
窓を開けて少しばかり落ち着いた曲を聴きながらセンチメンタルに煙を吐いて、コーヒーを一口。

 

 

それだけで、それだけで幸せ。
それだけで、それだけで癒えて、救われていた。
それだけで、それだけが僕にとっては至福なときであり、孤独なときだった。

 

 

隣に笑顔にしたい人でも居たらもっと幸せなんだろうと思ったりもするが
隣にそんな人が居たら嬉しくて楽しくてずっと笑っているだろうから、悲劇のヒロインにはなれないだろうね。

 

だけども、もういいかな。もういいんだ。
たまには悲劇のヒロインではなくて、誰かにとって一番大切なヒーローにでもなりたい。
一回でいい、一夜でいい、今宵だけで構わないから。

 

 

そう思いながら誰もいない助手席のシートを撫でて、また煙の行方を追う悲劇のヒロイン。

シートを撫でて自分を慰めるかのように
楽しかった時を思い起こす。


誰かと来たっけ、君が好きな音楽だったけ、あ、君がはしゃいでた場所だったけ。
あ、ここで君はそんなこと言ってたっけ。
たくさん傷つけたっけ、たくさん愛しあったっけ、どうだったけ。って、前に進むほどの新しい思い出なんか特になくて。


残り物はいつだって過去の思い出で、過去にすがって生きている。夜は許すんだってさ。

 

映画化にしたいほどの
思い出を抱きしめて、装飾して、台本も成立するほど僕の夜はいつだって、僕が僕を救おうとする慰めようとする。

孤独もいつかは報われる。なんて
ギブアンドテイクだから大丈夫なんて
信じちゃいないのに、飲み込みたくなる

 

ハッピーエンドを観て真顔で鼻で笑いたくなるくらいで。

バッドエンドを観て感動して現実的だと染みるくらいなのに。

 

どうやら、今はハッピーエンドも内心求めていたりもする。

信じる勇気がないだけである。

 

 

正直、飽きたよ、こんな夜も。

正直、聞き飽きたよ、こんな曲も

正直、知り尽くしたよ、こんな珈琲も。

正直、街並みもヘッドライトも街灯も全て見すぎたし感じすぎてもう空っぽってこと。

 

ずっと前から解っていた。

ずっと前から、結局これじゃ満たされないことも。

癒えない傷に絆創膏を貼りかえしているだけってずっと解っていた。

 

 

だけど、辞められないんだ。

アホだから。

アホだから。

 

アホだから、また今宵もスタバに向かって

アメリカーノベンティアイスって

そんな未来だけは想像できるのに。

僕は君との未来は見ようとせず、描かなかったのにね。

 

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